レース編みはやっぱりニードルポイントとボビンレースがメイン。
羊皮紙を土台にレースを作ったというのが気になって調べてみたら、画像検索でこういうのが出てきました。
Italy, Venice or Burano. Silk, sisal on parchment, needle lace. 1775
シルクにサイザル麻!羊皮紙にくっついたままで保存されていたみたいです。
こういうのからルーマニアレースあたりに繋がっていくのかなぁ…。
残念ながらタティングレースは、機械化で手作りレース産業界が衰退した後19世紀にまた復活の兆しを見せたときに、つられて18世紀の社交界で趣味として人気の高かったシャトル・レースが流行の波に浮上したと、その一文付近(p186)にしか登場しませんでした。
やっぱり生活の糧として作られる(商業ベースに乗せられる)レースと、家庭で趣味としてだけ作られていたレースの差かなぁ。
編み物や刺繍はプロ(職人)でもアマでも道具と技法にそこまで差がないけれど、タティングレースは他のレース編みとは道具と技法がかなり違うが故にその扱いの差なのかなと。
起源も一応16世紀のイタリアらしいというとても曖昧な物ですしねぇ。謎多きレース編み。
他はクンストも名前だけ、シェットランドレースは編み物の方にちょこっと。
ヴェネツィアスタート以降の西欧のレース編みがメインだったので、イスラム圏や東欧・中東地域でのレース編みの歴史も知りたくなりました。
トルコのオヤやアルメニアンレースなど。
エジプトではレース編みの技法って今に伝わるようなのはないのかなぁ。
フィレレースの元みたいなのは出土してるし、刺繍された衣装も古代エジプトの時代からあるようなのだけど。
手元に置きたい本だけど、古書価格が倍以上なので悩むところ。
それで検索してたら、同作者さんでレース単体の本があったので!こちらは予算内だったのでさくっとげっと。


そうそう、こういう図版があるとわかりやすいよね!
手芸の文化史からレース部分を抜き出して補強したような内容でした。
国別のレースの発展がより詳しいかなと思います。
機械編みの機械の変遷もこっちの方が詳しかったかも。
前に読んだ『レース―歴史とデザイン』も参考書籍として取り扱われてるので、あっちで画像参照こっちで文章で補完もできそう。
後書きのレースの展示会に寄せた推薦文に、ニードルポイントレース制作のベースになる羊皮紙や針、ボビンレースのボビンやピローなどの道具類も使い方と合わせて展示してあったらなぁって書かれてたんですけど、それこそこの本にもその解説が写真付きであったら解像度上がったんじゃないかなって思いました。
ちなみにこっちはタティングレースの記載は0です。切ない。
そういえばタティングレースの前身のノッティングを作ってる動画を見つけたんです。
Knotting Shuttles: The Single Knot
Knotting Shuttle: Couching the Knotted Thread
上がコードを作ってるところで、下がそのコードを布に縫い付けて刺繍に使用しているところ。
これいつからタティングに変わっていったんだろうなぁ…。
タティングレース - WikipediaWikipediaのイングランド女王メアリー2世のRoyal Knotterはタティングじゃなくてノッティングだったんじゃないかなって、そういえば
前にも書いた気がする。
あとがったがたに揺れる17~18世紀の馬車の中で編むって、タティングは厳しい気がするんですよ。
初期はリングとループしか作らなくて、あとでそれを結び合わせていたとしても、ピコットなんかは作るわけですし。
まだノッティングならそれこそひたすらに結んでコードを作るだけなのでいけるんじゃないかな~と。
古いタイプのタティングレース探し : Doilyで、ぐぐってたらこちらのブログの記事を発見。
アンティークレースも取り扱われてる骨董ディーラーさんっぽいです。
ペーパーバック – 2008/3/4
英語版 Pam Palmer (著)
この本から翻訳してまとめてくださったことによると、17世紀後半~18世紀まではノッティング(刺繍用のコード作成用)で、19世紀からレースへと発展。この頃からシャトルは小さくなり、細い糸を使うようになったと。
ほ~~~ら~~~~!
やっぱり肖像画のやたら大きいシャトルはほぼノッティング用なのな!
たまに小さいシャトルで編んでる手つきまで出てたらほぼタティングでしょうけど。
刺繍に使ったというのも納得しかないです。女王陛下でも刺繍作品を多く残されてるくらい、必修技術って感じですもん。
まぁやっぱりちょっと、イメージ先行でキャッチーに美しく整えられた事が書かれてるんだなって思ったのでした(wikipedia。
あれですレース編みの起源で古代エジプトの遺跡でもボビンが発見されて~みたいなの。
一見形状はボビンレースのボビンに似てるけど、どっちかというと織機の重しに使われてた説が濃厚でボビンレースの起源ではないんじゃないかなとか。
でも似てるだけで深い考察はせず、こういうのがあるから古代エジプトから伝わる技法~ってやりがち。
特にヨーロッパ人、古代エジプト起源説大好きだから…。日本人もだけど。
なにせ日本発祥のレース編みではないし、伝言ゲームに継ぐ伝言ゲーム、更に翻訳も挟まり日本版wikiみたいな事が日本ではテンプレになっちゃってるって感じですね。
むむむ、やっぱりノッティングからタティングへの変遷の、精度の高い情報が知りたい。
多少ロマンティックさは犠牲にしたとしても。
上の本の邦訳とか出たら良いのに~。
鉱物でもそうなんだけど、化学式がこうで色はこんなのがあってどんな内包物があり地域差で形状の特徴がこう現れてみたいなのと、古代からこういう神話と紐付けられてとかこういう意味で身につけられたとか、科学的な面と文化史・博物誌的な面、別腹で両方美味しいんですよ。
なのでレースもこういう謂われがあってって言うのと、実際の所はどうだったっていうのの両方が知りたいんです。
日本ではほぼ前者ばかりが言われるので、個人的には今は後者に重きを置いて知りたいなぁ。
口伝だけだと言い伝える人がいなくなれば絶えてしまうし、それはもったいないと思うんですよね~。
普通の人の生活に密着した生活史みたいなのが学問として扱われるようになったのも、歴史が浅いものですし。
上の書籍の飯塚信雄さんは既に亡くなられてるんですけど、今現在そういった手芸系の歴史を研究して本まで書かれてる方はあんまりいらっしゃらないようで残念。