図書館で借りた2冊です。
同じ作者さんで内容的にちょっとかぶってる部分有り。


両方とも遺跡から発掘されたビーズをはじめ、貿易で伝わって民族ごとに好まれたり使われたビーズの研究発表集的な感じです。
『アイヌのビーズ』は国立アイヌ民族博物館の特別展「ビーズーーアイヌモシリから世界へ」をきっかけに編纂された本。
大きめのビーズを連ねた首飾りであるタマサイ、それに円盤状のシトキという飾り板を付けた物。そしてビーズ製のニンカリという耳飾り。
古くは大陸から、中世には本州から輸入で入ってきたガラスビーズがアイヌ文化で愛されてきたんだなぁと。
なにげに縄文時代に新潟の翡翠が北海道まで行っていたのにびっくり。航海技術すごくないですか?
もったいないのは博物館に収蔵されているビーズでも、だれが・いつ・どうやって・なんのために入手したのかが分からない物が多いと言うこと。
今後発掘により入手できるものならば来歴がそこそこ判別できるのだろうけど、ビーズだけだとそれも難しいのが残念。
小児(男児)が前髪から垂らすビーズ『ホホチリ(2番目のホは小文字)』という風習がかわいい。
単に三角形の布だったり、それに細かいビーズを刺繍したものがったり、ビーズのみのビーズステッチっぽいものだったり。
小動物など獲物を自分で捕ることができた時に大人に切って外してもらえたとのことなので、一人前の証的なものだったのかなぁ。
またそれを、女性用の帽子にぶら下げた物もあったというので、切ったあとのものを記念に残してあったか子のために作った物を自分の装飾にも転用したか、生まれる子のために作り溜めたものかとか、想像が膨らみます。
台湾のパイワン族の多色ガラスのビーズの名称が興味深い。
アフリカのサンブルの結婚観やビーズ一粒一粒に込めた思いもすごかったなぁ…。まさしく記憶装置。
世界各地のビーズ文化が絶えないといいなと思います。
小さなガラス玉の中に民族の歴史や文化とロマンがいっぱい詰まってるんだなあ。
『ビーズでたどるホモ・サピエンス史』
図版などはこちらの方が多いような?ただし本文の図版は白黒。
翡翠ビーズ遺跡出土分布図は産地と生産遺跡も載ってて良かったです。
ヨーロッパとアフリカを繋いだトレードビーズ、子供の成長の無事を祈ったお守りとしてのビーズ、貝貨としてのビーズ、台湾のオオスズメバチの頭部を使った護符…。
クック船長がオセアニアの島々を航海しつつビーズなどと交換で食料を得ていた記録では、島やその中の社会階級によってビーズの価値がかなり違ってくるのが興味深いところ。
ニューカレドニアでは鉄は欲しがられたけど、ビーズの評価は低かったと書かれていて、流石戦闘民族と。
現代の日本のビーズについてはさらっとしか触れられてなくて残念。
ビーズバッグはなんかもう今は昔って感じですしねぇ。
ビーズの民族文化誌的な本2冊でした。
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