ぐるぐる完成とつれづれ駄文 - 20180311

Mary KoniorさんのTatting with Visual Patternsより、Windmillsを7枚繋いで完成です。

Image10927.jpg

使用糸はダイソー#40きなり。現行品です。
実は1枚目だった中央を間違えていたことが最後の1枚を結び始めた頃に気が付いて、泣く泣く切り取って結び直したのをはめ込んだのでちょっと不自然。
中央のピコで繋いでた所を切ったので、外側の隙間に無理矢理繋いだところが~。
近くでじっくり見ないとわかりませんが(笑。
糸が足りて良かったです…。
多分あと1枚分もなかった!

以下は長めの駄文メモです。
貴婦人のタティングシャトルについて、つらつらつれづれ。

某所のタティング豆知識は楽しく興味深く見ているのだけど、『発祥当時のシャトルは大きくて素材に贅沢な物が~』は、実用品じゃあないんじゃないかしらんと常々引っ掛かってたり。
あと大きいって事は、ノッティングも混ぜて考えてるのかな?
あの文面だと、貴族の趣味・教養だったから当然のように金細工や宝石で飾られた美麗なシャトルで楚々と糸を結ぶ貴婦人~みたいなイメージ先行な気がしてですね。若干もやっとしてたのです。
あっ、「それ全然違うから修正してよ!」みたいな話ではないので、その辺はお間違えなきよう。
そこまで確証のある徒然ではないでっすヾノ´ω`)単なる知識欲に端を発する駄文です。
妙に細かいことが気に掛かる、私の悪い癖。ってやつです。

アンティーク品ですごく豪華なシャトルは現存しているのですよ。
ただ豪華素材の物は下賜・贈答・肖像画用で、実際日常的に使われていたのはそれより安価な木や角・貝・ピューターなどの合金製だったのではーと。
なんでもそうだけど、実用品の簡素な物って数百年保たないで消えてく事が多いんですよね。
需要があれば作り続けられてはいくのだろうけど、それも時代と共に素材の変容は避けられず。
現代でも折れたり欠けたり、修復できない破損具合だったら処分してしまうでしょう。
数十年程度昔の物だってデッドストックでもない限り、当時の綺麗なままで見ることはあんまりないですしね。
贅沢な素材の物が残るのは大事に大事にしまわれてきたか、運が良かったか、その両方か。
それとヨーロッパには、手芸道具を幸運のお守りとしてプレゼントするという習慣があるのですよ。
だからシンブル(指ぬき)でもタティングシャトルでも日常使われていた物とは別に、贅沢な素材でプレゼント用として作られたものが現代まで残ってると考える方が自然に思います。



こんな宝石箱のように煌びやかなソーイングセットが作られてました。
ただここまで揃ってるのはアンティークマーケットでも稀で、何かが欠けてたり単品だったりって事も多いそう。
博物館なら綺麗に揃ってる状態の物が見られるかなぁ。王室所蔵品あたり。

あと貴族って結構TPO重視するので、普段使いに豪華絢爛金細工のシャトルを使うって言うのが考えづらいというのもありますね。
例えば食器やカトラリー一つ取っても、正餐用と普段用は厳密に使い分けられてたので。



現実的に考えても、繊細なマザーオブパールの象眼なんて、日々の手仕事でもりもり使ったらあっと言う間にはげっちょろけること請け合いです。
硬度2.5しかない鼈甲は爪でも傷付く柔らかな素材ですし。
馬車の移動に持ち込むほどの嗜み具合だったら、そりゃもう幾つものシャトルを使い潰してきたことでしょう…。
ノッティングのシャトルはタティング用よりも両端がいっぱいあいてるから、取り落としでもしようものなら大惨事だったでしょうね(笑。



ちなみにこちらの金細工とエナメル装飾のシャトル(18世紀のもの)はタティング/tattingじゃなくてノッティング/knotting(タティングの前身)用シャトルだそうです。
だから以前ピンタレストで集めたタティングシャトルを持った肖像画の幾つかは大きさと時代から言っても、ノッティング用のシャトルの可能性大ですね。
Wikipediaにあるイングランド女王のメアリー2世(17世紀)の詩もRoyal Knotterだから、knottingだったんじゃないかと。
これも正確にこうだった(タティングをやっていた)という話ではなくて、詩があったからそこから推察してやられていたのではないかという程度の話のようです。
わりとタティングの発祥時期も本によってブレがあって気になってたんだけど、そこはノッティング含めてかそうでないかの違いかな…。
結構願望込みの~だったらいいな程度のことでも断定的に書かれていて、ふわっと信じてしまう事が多いのだけど、実際はそこまで研究がなされてる分野じゃないので、発祥国じゃない日本で知ることが出来るのは伝聞に継ぐ伝言ゲームの端の端くらいに思った方がいいのかも。

一応現存するいろいろひっくるめたレースとしての技法が確立したのが16世紀のイタリア半島あたりで、そこから王族の婚姻等でイギリス・フランス・ドイツそしてベルギー等々に広がって独自の発展を遂げていったというのが大雑把すぎる一説になりますかねぇ。もちろんこれも諸々諸説有り。
古代エジプト云々ってたまにあるのは、糸を使って織るとか編むとかの起源まで遡っての言い方なので、"タティングレース"の発祥にはだいぶ遠いお話だと思います。
2~3世紀のコプト(エジプトにおける初期キリスト教の一派)の遺跡でレースとボビン(糸巻き)が見付かったという話も聞いたことがあるので、それはボビンレースの祖先と言っても遠くはないかなぁ。
ちなみに古代エジプトは紀元前3000~前30年あたりを言うので、2~3世紀は古代エジプトとは一般的にあまり言わないです。
これも画像込みのソースを探してみたのだけど、見つけられなかったです。
方円彩糸花網も世界最古(一応8世紀)のレースと言われていて、日本の奈良にあるんですよね。
こちらはニードル・レースの一種。製作場所は中国ともペルシャとも。
発祥時から今くらいのサイズのタティングシャトルに落ち着く100年ちょっと前くらいまでの遍歴を知りたいけど、日本語文献ではまず無いのがせつないです。
英語のパターン本の前書き程度だと、Wikipediaにある程度の情報しか見かけないですし(全部読んだわけではないので、詳しく載っている本もあるのかも。



こちらは19世紀後半のアメリカのタティングシャトル。
幅1/2インチ=1.27cm、長さ2と3/4インチ=ほぼ7cmなので、わりと現代のシャトルに近いサイズですね。



これも19世紀の、真珠母貝製のノッティングシャトルとタティングシャトル。
つまりこの辺りまではまだ、ノッティングは続けられていた感じかな?
今現在はノッティングって知名度がほぼないですよね。
私もタティングの前身、というくらいしか。太い糸を使っていたので、どちらかというと家具の装飾に使う物を結んでいたそうですけれど。
タティングは100年くらい昔の図案を見るに、ドイリーやちょっとした服の装飾、布小物の装飾がメイン用途。
というわけで、個人的にはノッティングとタティングは別個の物という認識なのです。



こちらも19世紀のもの。
牛骨製シャトルとわっか付きのタティング用かぎ針(purling pin)とのセット。



そういえばこういうフラットタイプはアンティーク(100年以上前の物)ではないのかなぁ。
こういうのもいつ頃から使われだしたんでしょうね。
作るのには作りやすい形状な気がします。

実用品がそのままの形で残ってないので、昔の手工芸の研究って難しいそうです。
食に関する方面の研究でもそういう話を読んだんですよね。
昔の例えば武器なんかはまだ実物や文献が残ってるけど、消え物は身近すぎて記録しようと言う人がいなかったとか、製法が文献より口伝頼りだったりする場合も多いなどなど(識字率の問題もある)で圧倒的に残ってないことが多いんですって。
分かりやすいのがチョコレート。コンキスタドールのせいであれこれぶっ壊されましたから…。
だからお菓子の発祥の地一つ取っても、うちが発祥じゃ!いやいやうちがそうじゃ!と論争になることが多々なわけですね。
物持ちの良いイギリスでも、近代の戦火で失われた物は多いでしょうし、フランスはフランス革命で貴族文化は徹底的に排除されましたからねぇ…。
ボビンレースみたいに風俗画としての絵が残ってれば、当時の作成風景の参考になったかもしれないけど、ノッティング/タティングシャトルは肖像画でおすましポーズがほとんどですからそういう参考にはあんまり。
風俗写真というのも時期によっては実はそこまであてにならなくて、わざわざ当時とは違う服装をさせて撮らせたみたいなのもあるから難しいそう。
今で言うコスプレみたいな。1枚1枚に時間がかかって高価だった時代のお話。
ついでに、貴婦人が嗜んでいたなら、その身近な庶民も嗜む…楽しみとしてよりは仕事としてやっていたという可能性はなかったのかしら?
例えば小間使い、侍女、レディズ・コンパニオン、乳母さんあたりですね。
お裁縫スキルはあったと思うけど、タティングとなるとどうかなぁ。
そう言うことの詳細も知りたいのだけど、なかなかまぁ…難しいです。

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